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過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)は、腸の機能に問題が生じることで、慢性的な腹痛や便通異常、膨満感などの症状が続く疾患です。大腸の粘膜に炎症や潰瘍、がんなどの明確な器質的異常は見られませんが、腸の機能が正常に働かないために症状が現れます。ストレスや緊張、不安などが症状を引き起こす要因とされ、自律神経のバランスが崩れることで腸の機能が影響を受けやすくなります。そのため、治療には生活習慣の見直しやストレス管理が重要となります。

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群の症状は大きく3つのタイプに分類されます。それぞれの特徴と対処法を理解することが重要です。

下痢型

突然の強い腹痛とそれに続く激しい下痢が特徴です。排便後には一時的に症状が緩和されますが、緊張や不安が引き金となって再発することがあります。日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあり、満員電車や会議など特定の状況に対して不安を感じることも少なくありません。このような症状がある場合、早期の適切な治療が推奨されます。

便秘型

腹痛を伴う慢性的な便秘が主な症状です。強くいきんでも小さなコロコロした便しか出ず、残便感が続きます。この状態は腸の機能不全によって引き起こされ、痔や大腸疾患のリスクを高めることがあります。便秘を繰り返す場合は、専門の医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

混合型

下痢と便秘を交互に繰り返すタイプで、日常生活に大きな影響を与えることが多いです。

その他

IBSには、下痢や便秘以外にも、おなかの張りやガスが溜まる感じ、大きなお腹の音など、様々な症状が見られます。これらの症状も慢性的に続くことがあります。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群(IBS)は、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。以下のような要因が影響しています。

食事内容や食習慣

食べ物の種類や食べる時間帯、食べ方などが腸の調子に影響を与えます。

緊張や不安、ストレス

過度な精神的ストレスは、自律神経のバランスを崩し、消化管の機能を乱します。

蠕動運動の異常

腸の動きが過剰になったり、低下したりすることで、便通に異常をきたします。

遺伝的要因

家族に過敏性腸症候群(IBS)の方がいる場合、発症リスクが高まることがあります。

過敏性腸症候群の診断

問診では、症状の内容や始まった時期、症状の変化、他の疾患や服用している薬、悩んでいる症状などについて詳しく伺います。便通異常がある場合は、排便回数や便の状態、痛みの有無やその内容、発症のきっかけ、生活習慣やライフスタイルについても詳しくお聞きします。

過敏性腸症候群の症状は他の大腸疾患でも見られるため、大腸カメラ検査を行い、器質的病変がないかを確認します。必要に応じて血液検査なども実施します。病変が見つからない場合、過敏性腸症候群の可能性が考えられますので、国際的な基準であるRome IV基準に従って診断します。

RomeIV基準

IBSの診断には、RomeIV基準という国際的な診断基準を用います。以下の条件を満たす場合にIBSと診断します。

  • 症状が過去6か月以上前から存在していること
  • 過去3か月間に少なくとも週1回以上、以下の2項目以上の症状が繰り返し起こっていること
  • 症状と排便に関連性がある
  • 排便頻度の変化が生じる
  • 排便形状の変化が生じる

大腸カメラについて

過敏性腸症候群の治療

食生活の改善

過敏性腸症候群(IBS)の治療には、まず食生活の見直しが重要です。暴飲暴食やカフェイン、香辛料の過剰摂取を避け、バランスの取れた食事を心がけましょう。特に食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂取し、高脂肪の食品は控えめにすることを推奨します。また、規則正しい食事時間を守り、1日3食を安定して摂ることが大切です。

生活習慣の改善

生活習慣を見直すことも過敏性腸症候群(IBS)の症状改善に役立ちます。十分な休息と質の良い睡眠を確保し、適度な運動を取り入れることが大切です。激しい運動は必要ありませんが、毎日の生活の中で歩く機会を増やしたり、エレベーターの代わりに階段を使ったりすることが有効です。また、リラックスできる時間を持つことも重要です。毎日ゆっくりとお風呂に入る、趣味に時間を費やすなど、心身をリフレッシュさせる活動を取り入れましょう。

薬物療法

症状やお悩みの内容、体質、ライフスタイル、服用している薬などを考慮して処方しています。服薬は医師の指示に従って行うようにしてください。症状や状態は変化しますので、再診時にはくわしくお話を伺って最適な処方を調整しています。様々な効果や作用を持った治療薬があり、新しい作用を持った薬も登場していますので、気になることやご希望がありましたら気軽にご相談ください。

過敏性腸症候群で主に用いられる薬

薬物療法は、症状やライフスタイルに応じて調整します。以下のような薬を主に用います。

  • 消化管機能調整薬(腸の蠕動運動を整える)
  • 便の水分バランス調整薬
  • 下痢症状改善薬(下痢の予兆がある際に服用し、症状を抑える)
  • 便秘解消薬
  • 抗コリン薬(腹痛を和らげる薬)
  • プロバイオティクス(乳酸菌などを用いて腸内フローラを整える)